この美しくない世界で、希望の狼煙(のろし)を上げる。
三船さんはインタビューでこう語っています。
「人とつながるために、体を使って"吠える"こと...それがこの世界で今一番欠けている気がする。」
曲名の『HOWL』とは吠えるの意味であり、狼の遠吠えのことを指しています。
狼が遠吠えをするのは、どこかにいるであろう仲間たちと意思疎通を図るためであり、これは身体性を伴うコミュニケーションです。
『HOWL』という曲名に込められた意味も踏まえ、歌詞を読み解いていきます。

君は昨日 どこで眠ったの?
明日はどこで 眠りにつくの?
眠ってる間 平和なの?
眠った後は どこへ行くの?
"僕"が心配して、"君"に色々と問いかけています。
問いの内容から察するに、どうやら"君"は一人であちこちをさまよっていて、安心して過ごせる居場所がないようです。
今夜出かけよう 誰も僕らを知らない場所へ
世界が美しくなくても かまわないでしょう
僕らが いるなら
寄る辺ない"君"にとって、世界は美しく映らないでしょう。
むしろ、残酷に思われるはず。
そんなことにはかまわず、"僕"は"出かけよう"と"君"を誘います。
目的地は、"誰も僕らを知らない場所"です。
さて、"誰も僕らを知らない場所"とは、どんな場所のことなのでしょうか。
雪が 降り止まない
狼たちが 吠えるように
僕らは泣いてみせた
全部 大丈夫、平気だよって言うけど
だったらなんで そんな顔で笑うんだよ
雪が絶え間なく降り積もる静かな世界で、狼たちが吠えている景色が浮かびます。
それと同様に、"僕ら"も泣いている。
けれど、雪がすべての音を吸いとって、その泣き声は心の外までは届かないようです。
むしろ、あえて心の中に雪を降らせて、泣き声が外に出ないようにしているのかも。
そして、"平気だよ"と強がる。でも、そんな様子は"僕ら"にはお見通しのようです。
言いたいことは たくさんある
けれどいつだって 足りないんだ
世界が美しくなくても かまわないでよ
僕らが いるのに
言葉はいつだって無力です。
傷ついて心を痛める人がいても、慰めの言葉だけでは癒しきれない。
けれど、"僕ら"が居てくれる。そのことが慰めになるのは確かでしょう。
今夜出て行こう 誰も僕らを知らない場所へ
世界が美しくなくても かまわないだろう
僕らが いるなら
"僕ら"から連想するのは、狼が群れを作っている様子です。
これは共同体であり、仲間と呼ぶべき存在だと思います。
そんな"僕ら"の目的地である"誰も僕らを知らない場所"とは、美しくない世界から隔絶された、仲間だけの「ホーム」ではないでしょうか。
ニュースを眺めていれば、この世界が美しいとは言い難いことがよく分かります。
戦争、貧困、格差、差別、分断など残酷で醜い事柄が散見され、目を覆いたくなります。
でも、目をつむっていたって、僕らの生きる世界の実情は変わりません。
ならば、この世界に絶望して生きていくよりないのでしょうか。
『HOWL』が提示しているのは、ひとつの代替案だと思います。
この世界が残酷で醜く、変わりようがないのであれば、僕らだけの美しい居場所(ホーム)を探そう。そのきっかけとなるのが、"吠える"という能動的な行為です。
それはきっと、誰かにとっての希望の狼煙(のろし)になるに違いありません。
【基本情報】
『HOWL』は、ROTH BART BARONの7th アルバム「HOWL」(発売日:2022年11月9日)に収録されている曲です。
『HOWL』はYouTubeから視聴できます↓
ROTH BART BARON/ 三船 雅也さんの紹介記事はこちらから↓
フォークロックバンド「ROTH BART BARON / 三船 雅也さん」の紹介 - かわずの音の葉
(初稿:2025年9月28日)





