かわずの音の葉

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【楽曲レビュー】跳躍 / 日食なつこ

【基本情報】

「跳躍」は、日食なつこさんのPre Debut 1st ミニアルバム「LAGOON」に収録されている曲です。発売日は、2010年7月15日。日食なつこさんは、当時19歳でした。
高校生の音楽甲子園とも呼ばれたストファイHジェネ祭り09のファイナルステージでも披露されています。
なお、「LAGOON」に収録されているのはピアノ弾き語りバージョンであり、1st Full Album 「逆光で見えない」には、バンド編成バージョンが収録されています。

「跳躍」はYouTubeから視聴できます↓

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日食なつこさんの紹介記事はこちらから↓

シンガーソングライター 「日食なつこ」さんの紹介 - かわずの音の葉

 

【考察&感想】

ちっぽけなあなたを奮い立たせる応援歌

「跳躍」には、”あたし”と、あたしが憧れる”あんた”が登場します。

前半パートは、他人の思惑が気になって、他人と交われない”あたし”の自意識が語られ、それではダメだと自ら叱りつけ、人との交わりを促しています。
一方、19歳の日食さん自身は、一人で音楽をやることを選んでいます。他人と上手く交われない、自身の経験が歌詞のもとになっているのでしょう。

 

バンドの音楽がすごく好きなので組んでみたかったのですが、そういう環境に巡り合うチャンスがありませんでした。人と音楽をやるとぶつかってしまう事が多くて、中学生の時、吹奏楽部に入っていましたが、同じパートのコに直接的に色々言い過ぎて傷つけたりしていました。自分のやりたい事をつきつめようと思ったら、わがままで、色々な人を傷つけてしまいそうなので一人でやっているのだと思います。

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後半パートは、”あたし”と”あんた”との対比が語られ、取るに足らないちっぽけな”あたし”が描かれています。それでも、”今こそ人混みの中へ飛び込もう/ さああんたよ見ていて”と負けん気とともに、決意を示した言葉で締めくくられています。
このラストが、いかにも日食さんらしい。

 

EMTG:ずっとピアノ弾き語りというスタイルなんですか?
日食:そうですね。でも、本当はバンドがやりたかったんです。綺麗な音楽より、かっこいい音楽に憧れてたから。だけど入った高校にそういう環境がなかったのと、いわゆるコミュ症だったから人を集める力もなく、とりあえずなんでもいいからひとりで続けようと思ってやってきたんです。そうやってるうちに、全国でバンドやってる同い年の奴らはどんどん頭角を現してくるし、もう悔しくてしょうがなくて。こいつらになんとかして食いついていかなきゃと思って、ひとりでいろんなオーディションを受けたりしてましたね。

日食なつこ、セルフプロデュースで完成させた“攻撃的”な勝負作『逆鱗マニア』 | スペシャル | Fanplus Music

 

「跳躍」の歌詞は、日食さんの内面から拾い上げた当時の自意識や感情がもとになっているのでしょう。ただし、日食さん自身は、『他人と交われないなら、いっそひとりでやってやる!』という精神の持ち主ですし、完全に自己を投影した歌詞ではないと考えられます。

 

例えば“跳躍”っていう、かなり初期の曲があるんですけど。「ものすごい葛藤を歌った曲だねえ」とか言われてるんですけど、それこそ私の中ではあの曲は(中略)あの跳ねるリズムの中で、歯切れのいい言葉を並べて、ごった返すようなAメロからの、突き抜けるサビで、みんなをあの音の感じで奮い立たせる、っていうことをやりたかっただけで。
そこまで葛藤しながら書いた曲でもなくて、むしろすごく計算して書いた曲なんですよ。

ピアノソロ弾き語り、その理想を語る! 日食なつこ×komaki対談(2015/12/09)邦楽フィーチャー|音楽情報サイトrockinon.com(ロッキング・オン ドットコム)

 

シンガーソングライターとして、誰かを奮い立たせたい、そのための物語と旋律なんですね。

 

まだ青さを感じさせる歌声が聴けるのも、この楽曲のステキなところだと思います。
日食なつこさんの、アーティストとしての原点を記録した1曲である、と言えます。

 

(初稿:2024年9月8日)